特定行為の【不都合な真実】 2人の修了者の苦悩

Twitterで「看護師の特定行為コミュニティ」を運営していて、看護師の特定行為について、色々な方に話を伺う機会がありました。

今回は、TwitterのDMで直接やり取りをさせて頂いた方、お二人のエピソードの紹介になります。
ご本人には、ブログに掲載させて頂く許可を得たので紹介させて頂きます。

特定行為を修了された方は、誰しも関わる問題だと感じています。

目次

特定行為の可能性を信じて奮闘するAさん

Aさんは現在、集中治療室で勤務されています。活動日を設けていて、活動日は医師と共に活動し、お話を伺う限り知識や技術をハイレベルで習得されています。

特定行為研修を修了した最初の頃は、非常に苦労されていたそうです。Aさんの声を、下手にいじらず直接載せた方が読んだ方に伝わると思いました。

活動が始まった最初の頃は、研修を修了したからといって一人立ちしてるわけじゃないです。
手技やアセスメントにも自信がないから 、すごく中途半端でみんなに迷惑かけてるなって思って、活動日を減らしたいって思ってました。

でも、最近は一人で出来ることも増えて任せてもらうことも増えてきました。

スタッフや患者との距離が縮まってきて、患者が良くなったり若手が育っていくのをみるのは、とてもやりがいがあって楽しいです。
でも心身が削れるわりに、、、 っていうのが。

Aさんは、活動日を設けたことで、夜勤が月に1回に減ったそうです。そのため、収入が減ったと伺いました。参考書の購入やセミナーに参加したいけれど、収入が減ったことで思うようにいかないとおっしゃっていました。

Aさんは、とても努力されています。
しかし、「やりがいだけじゃ続かない。手当とかその辺の環境が整わないと、今後特定看護師が増えないし、 報われない人達が増えてくことを考えて動かないと厳しいですよね。」と、とても共感できます。

Aさんの周囲の環境

特定行為を活用するには、周囲の理解や協力が必要です。主に、所属する病棟のスタッフや診療部、看護部です。批判的な意見もありますが、現状を知って頂くのと今後の修了者たちのミスマッチを防ぐためにも、そのまま紹介します。

理解があり、協力的な医師たち

Aさんの病院の医師は、特定行為にとても理解があり協力的です。こんなエピソードを伺いました。

診療報酬改定に伴い、特定看護師も診療報酬加算が取れるようになりました。「術後疼痛管理チーム」を発足させ、特定看護師により発生した診療報酬加算を「特定看護師の手当を増やしてあげたい‼」と、上層部へ掛け合ってくれています。

オペ室に在籍している特定看護師は、医師の昼休憩の間、麻酔管理を交代で行っています。特定看護師が、代わりに麻酔管理を行うことで、非常勤の医師を減らすことが出来ています。非常勤を減らして浮いたお金を「特定看護師の手当に‼」と掛け合ってくれています。

これだけ、理解があり協力的な医師は中々いないです。

変化を嫌う看護部

医師は、非常に協力的ですがAさんは看護部に所属しています。そのため、看護部に決定権があります。看護部に、中々活動を理解してもらえないと仰っていました。

私の病院は、特定行為研修の管轄は「研修センター」で研修修了後の管轄は「看護部」という形で、管轄と研修をするところが別れています。

特定行為研修を修了したといっても、すぐに1人で自立して活動できるわけではありません。不安もあるため、看護部に研修修了後にトレーニングをしたり、自己研鑽のサポートが欲しいと要望したけれど「何で?」と突き返されました。

今後の活動方針についても、 医師とどのようにタスクシフトしていくか。話し合いをしました。
しかし医師からは
「看護部から『タクスクシフトじゃなくて、シェアです。特定看護師がどこまで介入するかはこちらで決めます。』と言われている。だけど看護部からは、どのように特定看護師を活動させたいかビジョンを全く提示してこない。」
と言われました。

看護部から、何のアクションもないので、活動方針についても進んでいないまま、今に至ります。

Aさんの特定行為に対する思い

施設実習が始まったのが、ちょうどコロナが流行りだした時期でした。一時病床数を増やしたのですが、人員の補填がなくスタッフも疲弊していた頃です。実習も休止とならず続行することとなったので、部署のスタッフからしたら迷惑な話です。
研修が修了してからも病院としての働き方のビジョンがないので、部署で手探りな状態で活動を始めたので、何やってるのかスタッフには分からなかったと思います。

最初は医師がどんな働き方をしているのかを知ったり、技術もアセスメント力もないので、ずっと医師に付いてもらい指導を受けながら患者管理をしていました。スタッフからは「もっと看護をやってほしい」と言われたことがあります。苦しいときになんの役にもたってないと感じていたので、心にグサッとくるものがありました。

実際特定行為研修は取得しているものの、権限の問題から出来ないことも多かったです。 最初のうちは、自分が担当している患者のベッドサイドで働いているスタッフに声をかけて「困ってることはないか、手伝うことはないか」と一緒にケアをすることから始めました。その中で、実施可能な特定行為を行ってきました。

それから段々と「ちょっと相談していいですか?」とスタッフから声をかけてもらうようになり、医師との間に入るような関わりとなりました。それでも「これでいいのかなぁ?」と思ってていたため、ちょうど活動して半年が立った頃に部署で医師と看護師向けに特定看護師に関するアンケートをとりました。

スタッフからは、「もっと看護業務をやってほしい」という意見もありましたが、大多数の意見は
・「医師に相談しにくいと思うことでも気軽に聞けて助かる」
・「なんでも相談できる」
・「もっと特定行為について理解したい」
などの肯定的な意見が多かったのです。

部署のスタッフは、「特定行為を行うことで助かる存在であってほしいというよりも、その知識をもって相談役や調整役になってほしいとい」と思っている事がわかりました。それからはどんどん看護師や患者との距離を縮め、医者や多職種とも密にコミュニケーションをとり、その中で必要な特定行為をやるというスタンスを取っています。

最近は師長からこんなフィードバックがありました。 「個人面談をしたら若手や中堅のスタッフが自分さんみたいになりたい、特定看護師になりたいって人が何人もいたよ。」私達の活動をなんとか確立するために奮闘してくださる部署の師長さんの働きかけもあったと思いますが、本当に嬉しかったです。

まだまだ道のりは長いですが、スタッフからの理解も少しずつ得られ、医者の協力もある環境なので後は、看護部や病院と特定行為をどう活用していくかを詰めていけるといいなと考えています。

色々な壁にぶつかりながらも、特定行為の活用を進めていったAさんはとても素晴らしいと思います。Aさんの活動が徐々に理解されるようになり、特定看護師になりたいというスタッフがいることは、Aさんの活動が認められたということではないでしょうか。

看護師のために特定行為をすると決めたBさん

Bさんは、一般病棟で勤務をされています。「看護師のために特定行為をする」と方針を決めた経緯は、とても納得できるエピソードです。

研修を修了して、最初の頃は結構やる気があったんです。どんなことが出来るかなってワクワクもしてました。

活動日を作って、他の修了者と一緒に医師からアドバイスを貰いながら、活動をしていました。ただ、途中から「私のしていることは、看護師のメリットになっているかな?」と疑問を持つようになりました。

そこから、所属している病棟の看護師が数名辞めることになって、活動日の確保が難しくなったんです。でも、せっかく研修を修了したしもっとやってみたいとも考えてました。この時が一番悩んでいました。

ある時、私がちょうど見えないところで病棟のスタッフが「特定行為ってあまり私たちのメリットになってないよね。それよりも、受け持ちとかリーダーをやってほしいんだけど!」って言っているのを聞いてしまったんです。

そこで、心が折れちゃって。私のやっていることって、あまり評価されていないんだなって。

すごい落ち込みましたけど、せっかく得た資格だから何かに活かせないかなって考えるようになりました。他の修了者とも相談したんですけど、活動日は作らないで看護師業務をしながら出来る範囲で特定行為をやろうって方針になりました。

ただ、他の修了者は活動日を作っていて活動しています。私は、自分がどうしたら納得できるのかって考えて「看護師のために特定行為をやろう」って決めました。

今は、病棟のスタッフから「○○の特定行為をして貰えない?」って頼られるようになって楽しいです。結局、自分がどうしたいかなんですよね。

このエピソードを伺ったとき、とても話が重くて反応が出来ませんでした。非常に共感できる部分もあります。

一時は、特定行為そのものを辞めようと悩まれていたこともあったそうです。今は、自分で納得が出来る働き方が出来て、充実していると伺いました。

特定行為を活用するための課題

特定行為の現状は、「周囲に理解をしてもらう 活動内容をしってもらう」ことが課題になっています。周囲の理解と協力をどのように得ていくのかが、非常に難しいです。

Aさんも、Bさんも病棟のスタッフから「特定行為よりも看護師業務をしてほしい」という声が出ています。この記事を読んでいる修了者も同じ経験があるのではないでしょうか?私も経験があり、とても辛いです。

「特定行為よりも看護師業務をしてほしい」この声が、特定行為の活動をしていく上での壁じゃないかと思っています。今まで、一緒に協力してきたスタッフから自分の活動が評価されないのは、本当に辛いです。

私なりに、その原因を考えてみました。

  • 特定行為が看護師の看護師のメリットになっていない場合がある
  • 病棟に所属することはメリットでありデメリット

この2つについて考察します。

特定行為が看護師の看護師のメリットになっていない場合がある

患者の治療をする医師と、診療の補助と療養上の世話をする看護師。この2つは、同じ方向を向いているようで微妙に違っています。

看護師が普段行っている「清拭やトイレ介助、食事介助、入院対応、家族対応」は、特定行為を行うことによって解消するでしょうか?

特定行為を行うことで「患者の治療がスムーズに進む」という点ではメリットですが、直接的な看護師のメリットとしては弱いです。

病棟に所属することはメリットでありデメリット

特定行為修了者は病棟に所属し、「活動日」を設けている方もいますが、普段は病棟で看護師業務を行っている方がほとんです。病棟のスタッフは、特定行為修了者を「同じ部署のスタッフ」として捉えているため、特定行為に時間を割くより看護師業務をしてほしいという認識になります。

では、所属を「看護部」や「診療部」にすれば良いのか?というとそうではないと、私は考えています。

Aさんが仰っていた「特定行為を行うことで助かる存在であってほしいというよりも、その知識をもって相談役や調整役になってほしい」と思っている事がわかりました。

病棟のスタッフと、このような関係を築くためには同じ部署で働くことが重要だと思います。時々、ラウンドに来る他部署のスタッフとは、距離が生まれます。

まとめ

今回、紹介させて頂いたAさんもBさんも、どちらが正しいということはないと思います。

重要なのは、Bさんが仰っていた「結局、自分がどうしたいか」ココにつきると思います。

この記事を作成しようと思ったきっかけは、研修修了後のミスマッチを減らすことが目的です。

特定行為研修の受講を考えている方もいらっしゃると思います。特定行為研修を修了した後のストレスが分かっていれば、自分がやりたいことが明確になると思い、お二人に承諾を得てエピソードを紹介させて頂きました。

この記事を書いた人

看護師のキャリアと働き方の奮闘について情報を発信中

シトラス
  • 30代 2児のパパ
  • 会社員を経て看護師になる
  • 看護師5年目で特定行為研修を受ける
  • 妻のうつにより育休&時短勤務を経験

修了した特定行為区分

  • 呼吸器(気道確保に係るもの)関連
  • 呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連
  • 栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連
  • 動脈血液ガス分析関連
  • 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連
  • 循環動態に係る薬剤投与関連
  • 術後疼痛管理関連
よかったらシェアしてね!
目次