看護師資格を取られてから3年以上が経ち、そろそろ転職やキャリアについて悩む方もいらっしゃると思います。
看護師のキャリアとしてメジャーなのは「認定看護師」と「専門看護師」です。それから最近認知されるようになってきた「診療看護師(NP)」と「特定看護師」も気になる所ではないでしょうか。
看護師としてのキャリアを考えた時に,「特定行為修了者」の数が少なく情報が不足しているため、「特定看護師」になるという選択肢もあるということをご存じのない方もいらっしゃると思います。
この記事を読むことで、「特定行為修了者」の研修機関の現状や活動状況、手当の有無などを紹介しています。
この記事のスライドは、「2022年2月14日 第28回 医道審議会保健師助産師看護師分科会看護師特定行為・研修部会」の資料を引用しています。
- 特定行為研修施設と研修機関の現状について分かる
- 区分毎の特定行為修了者の数が分かる
- 特定行為修了者の手当について分かる
- 特定行為修了者の活動状況について分かる
- 特定行為の診療報酬改定について分かる

タスクシフトによる「特定行為」の需要の増加


医師の働き方改革で、「特定行為」の需要が増えるってこと?



2024年に実施される「医師の働き方改革」に伴い、医師から他職種へのタスク・シフティングが重要視されています。「特定行為研修を修了した看護師」への期待が高まっていて、「特定行為」の活動は広がっています。
数年後には「特定行為」を修了した特定認定看護師や特定看護師は、現在とは異なる仕事内容に移行している可能性があります。
特定行為研修制度と研修機関の現状について
指定研修機関と研修修了者の推移







指定研修機関と修了者数は、年々増えているのね。



そうですね。研修機関が増えることで、わざわざ遠方に通うことなく、自宅から通う選択肢も出来て研修を受けるハードルも下がりますね。
指定研修機関あたりの特定行為区分数と定員数







受講できる特定行為区分の数は「4区分」と「5区分」が多いのね。
一度の定員数は「5名」が一番多い、もっと多いのかと思っていたわ。



受講できる特定行為区分の数を増やそうとすると、研究機関の方の負担が多くなるからではないでしょうか。
しかし、今後の特定行為の発展を考えると、特定行為は幅広く修了しておくことをお勧めします。「7以上の特定行為区分」の受講や「21区分」の全ての受講を考えている方は、研修機関が少ないために、ホテル滞在等の研修生活になるかもしれません。
少人数の受講のメリットは、1人1人に細かく個別対応が出来ます。また、少人数は何かと融通がききやすいこともメリットです。
特定行為区分別の修了者数と就業先の割合
指定研修機関の開講状況と区分別の修了者数







指定研修機関の開講状況と修了している修了している特定行為区分の比率は、大体同じなのね。
修了者の数の多い特定行為区分は、人気や需要があるの?



修了者の多い「呼吸器関連」 「動脈血液ガス分析関連」 「創傷管理関連」の特定行為区分は需要も人気もあります。
最も、修了者の多い「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」は、「脱水症状に対する輸液による補正」目的で修了することが多いですが、使いどころは難しいと感じています。
理由として、医師によっては①輸液を減らして昇圧剤(ノルアドレナリンなど)で血圧をコントロールしたい人 ②輸液を多く投与して血圧をコントロールしたい人など好みが違うからです。
認定看護師と専門看護師の特定行為修了の推移





この図は、「認定看護師」 「専門看護師」 「診療看護師」の特定行為修了の有無を表しています。認定看護師も、半数以上が特定行為を修了していないことが分かります。
診療看護師の9.2%が特定行為を修了後に診療看護師を目指していることも興味深いです。
特定行為修了者の手当て


中々、厳しい結果です。
特定行為修了者として、手当を貰っているのは「26.4%」 3/4が手当てを貰っていないことになります。大きな課題です。
手当の金額は「10~20万円」が最も多く30%で、毎月換算にすると月に1万円程度でしょうか。



ちなみに私は、手当は貰っていません。
こちらのツイートの修了者の返信をご覧ください。
みんなの施設は、どうでしょうか?
— Y2 (@yuki510314) September 28, 2022
看護師特定行為研修修了した看護師に何か手当て付いてますか?
救急対応数、麻酔管理数、picc挿入数などによって、増額ありますか?
特定行為の実施状況、特定行為の実施効果







特定行為を修了しても実施していない人もいるのね。
活動日を設けている人も30%くらいなのね。



特定行為を運用するにあたり、運用方法の確立が課題です。システムの構築には、医師と看護師だけでなく医療安全や情報システム部などとも話し合いが必要になります。
上の図の「特定行為の実施効果」について、表記されていないメリットがあります。例えば、処置(人工呼吸器の離脱やドレーン抜去など)を特定行為として医師の代わりに行うことで空いた時間で、点滴や薬の処方を午前中の早い時間に済ませることが出来ます。
処置が重なって、15時過ぎの点滴や薬の処方は「やめてください。先生(-_-;)」と言いたくなります。
区分別・パッケージ研修別の特定行為実施の有無







どの特定行為も「修了したけど、使っていない」ということはないようです。10年後や20年後に部署異動や訪問看護 老人保健施設に勤務している可能性を考えると、幅広く特定行為を修了しておく方が後々に選択肢が増えそうですね。
特定行為研修修了後のフォローアップ





研修を修了=即実践可能というわけにはいきません。修了したスタッフが複数いれば、全員が同じようなレベルで特定行為を出来るようにする必要があります。
コチラも参考にどうぞ!


特定行為研修を受講した動機





認定看護師の教育課程にも特定行為研修は組み込まれているのね。



「B課程」のことですね。私は、特定行為研修のみを修了したので「認定看護師」の資格は持っていません。
特定行為を幅広く修了することを考えているなら、「B課程」ではなく、パッケージ研修か区分別に特定行為を受講することをお勧めします。


特定行為研修受講にあたっての退職・支援







仕事との両立に関しては、特に共通科目の講義の振り返りの時間を確保することが大変だった記憶があります。子供を寝かしつけてから、22時過ぎからひっそりと勉強をしていました。
ただ、臨床推論とか楽しい勉強もちらほらありました。余計なことまで調べたり(笑)
受講中の収入が減少することは死活問題です。事前に家族と話し合いをしましょう。受講費補助も交渉次第です。勤務先からふんだくりましょう。
特定行為の可能性
管理者が考える修了者の活用





特定行為のニーズは十分にありそうね。



医師の働き方改革に伴うタスクシフトや診療報酬の改定など、特定行為の需要は増えていくことが予想出来ます。
特定行為の診療報酬の評価







以前は、認定看護師や専門看護師の配置によって満たされていた「診療報酬」も、特定行為修了者でも可能になったのね。



そうですね。例えば、「特定集中治療室管理料」を満たすために認定看護師(CNS)か専門看護師(CN)が配置されていました。
8区分を修了した特定看護師での配置でも「特定集中治療室管理料」を満たすことが出来るようになりました。特定看護師の需要は高まりそうです。
まとめ
徐々に「看護師の特定行為研修」が認知されていますが、情報不足という点は否めないです。そのため、「特定行為研修」そのものが認定看護師の「B課程」を終えるのに必要な研修という捉え方もされていると感じています。今後、「特定行為」という「医行為の代行」は活動の幅や需要は広がることが予想されます。
特定行為は「看護師へのメリットが薄い」という課題はありますが、看護師が今まで医師が行っていた業務を一部負担することで、医師の空いた時間に看護師のしてほしいことを頼んでしまえばいいと考えています。
特定行為を行うことが重要なのではなくて、特定行為を行うことで看護師がメリットを得るというくらいの認識で「特定行為を使う」という方が便利ではないでしょうか。