目次
特定行為研修を修了した看護師が認識する「看護実践の変化」

特定行為研修を通して、身についたスキルを活かして看護実践がどのように変化したのか紹介します。
※ここで紹介させて頂く「特定看護師」は、専門や認定といった資格を持たず、主任や師長といった役職も持たない「看護師」が特定行為研修を修了したことを指します。
日本看護科学会誌 「特定行為研修を修了した看護師が認識する看護実践の変化」より引用させて頂きました。
医学的な推論や判断ができるようになる
- 「患者さんから『肩が痛い』って言われたときに,その症状から,ついている疾患名だけではなく,いろんなことが想像できる。
狭心症で入院していた人が,実は急性心筋梗塞になって肩が痛いっていうような状況に,もし万が一なっていたときに,じゃあどういう症状が出るのかなっていうのを患者さんのおっしゃっている症状から,疾患を推察する」 - 「(創部の色が)同じ黄色でも,壊死なのか,不良肉芽なのかってあるじゃないですか。≪中略≫不良肉芽なのか,黄色の壊死組織なのかっていうところの判断基準が自分の中ではっきりしてきた。
次のアクションとかにも,例えばいまは膿を出す時期,不良肉芽だったらちっちゃくしないといけないじゃないですか。でも壊死組織だったら除去しないといけない」
フィジカルアセスメントを行う視点が広がる
- 「浮腫の観察をするとき,いままで,四肢,手とか足を観察していたんですけど,体幹の後ろって気にしたことがなくって.臥床している人って多いじゃないですか,入院している人。
水が一番溜まりやすいのは,背部のここ(体幹)になってくるし,手とか,足とかの浮腫っていうのも一つだけど,ここ(体幹)の浮腫が一番確認もしやすいっていうのを(当該研修で)聞いて。実際やってみて,あー,確かにそうだなって」
診断や治療に踏み込んだ発言ができるようになる
- 「足のASO(閉塞性動脈硬化症)で入院されて,足に創があって,足の治療しに来ましたよっていう方が,ベッドをギャッジアップしたら意識失って。で,戻したら,普通になってっていう人がいたんです。≪中略≫『明らかにこれ,頸動脈に狭窄あるんじゃない』って言って,このへん(頸部に)エコーあてたら,実際に細く,狭くなってて。
要は脳虚血,一過性の脳虚血状態になってレベルが落ちてっていう状態だったんです。『この後,脳梗塞に至る可能性が高いから』って先生に報告しました」 - 「創の排膿をみたときに『先生,ここまで切開しないとまずい』とか。『抗生剤いってないんで,こういう状況になっているから,抗生剤これやっといたほうがいい』,『軟膏はこれのほうがいいです』っていうのを,『…っと思うんですけどどうですかね』みたいな感じで提案していく。
『痛みが出てくるんで,この後,定期的に痛み止め増やして使っていきますから』とか。創の状況みた段階で,創の介入の仕方,軟膏,感染コントロール,疼痛コントロール,そういうのをあらかじめ『こうでいいですよね』って(医師に)こっちから提案して」
特定行為が行えるからこその提案を医師にできるようになる
- 「めちゃくちゃ忙しいときに,先生も対応に追われているし,でも,この人(患者)は呼吸状態が悪いから,絶対に血ガスで採血をしないといけないとなったときに…先生に言っても,先生はこっちの患者さんがいま大変だからってなっているときに,
≪中略≫先生に,『こういう状態の人だから,早く(血ガス)とってほしいです』とか,もし先生がそのとき手が空いてないんだったら,『もう早く(血ガス)とったほうがいいので,私がもし良ければとります』っていうのは言います」 - 「静脈麻酔と吸入麻酔があって,吸入麻酔はある程度ガスを流しといたら大丈夫なんです。放っとくって言ったら言い方悪いですけど。でも,静脈麻酔を使うときは(患者に)ずっと付きっきりでいとかないと。(薬剤が)なくなると患者さんが起きちゃうので。
(だから,医師の)手がまわらないときは吸入麻酔薬にいきがちなんです。でも,静脈麻酔のほうがいいこともいっぱいあって。『この人(患者)の場合は,大変やけどこっち(静脈麻酔)にしませんか?私みときます』とかもできるんで。(私は)鎮静薬の量の調整ができるので」
特定行為が行えるからこそ提供できるケアが増える
- 「(手術中は)患者さんは寝ているので,寝返りもできない。一応外回りの看護師が背抜きとか,そんなんぐらいは術中でもパって手突っ込んでしたりするけど,やっぱりこのへんはね(首から上を指す仕草),触りたくないんですよ,看護師の立場からすると(頭側には麻酔科医が立っているため)。
でも,私は最近,麻酔科側の立場にいることが多いので,ここ(首から上)も,背抜きじゃないですけど,圧を…ちょっとだけ顔を横向けてあげたりとか,そんなのもできるので,このへん(首から上)のトラブルはないかなって」
患者へ療養上のアドバイスを行うときにデータが活用できるようになる
- 「患者説明に関しては,前と明らかに変わって.『いまこういう状況だからこうですよ』っていうのがいままでだったんですけど,電カル持っていって,画像みながら『いまこういう状況だから』って(説明するようになった)。
≪中略≫『現状がこうだから,じゃあいまリハビリ頑張りましょう』,『みてください,このエコーで,心臓こんなんしか動いてないですよ』とか。急性期もそうですし,退院前の患者さんにも同じように画像をみてもらって,『(心臓が)こういう動きしかしてないんですよ』って。『だから退院したときに,こういうことに注意していかなきゃいけない』って言えるようになった」
患者や家族の心情にいっそう配慮できるようになる
- 「医療面接で,『こういうふうに言葉を選んだらいいですよ』っていう言葉を選ぶと,家族さんがすごくお話してくださるようになった経験をして,こちらの声掛け次第で,患者さんなり家族さんも,この人だったら話せるわって思ってくれることがあると思った.
≪中略≫例えば,『お酒やめられないんですよ』って言われたときに,『お酒はやめたほうがいいですよ』,『そんなにたくさん毎日飲んだら身体に悪いですよ』って,たぶん,いままでの自分は言っていたけど.
研修を受けてから,≪中略≫私,本当にただオウム返ししただけなんです,患者さんの話に対して.『やめたいとは思っているんですけどね』,『あ,やめたいと思っているんですね』.本当にそれしかしてないけど,すごく患者さんが話してくれて」



皆さん、すごいわね。こんなこと出来るようになるの⁉



ここで注目してもらいたいのは、「特定行為の実施」ではなくて研修で学んだことを活かしている「看護実践」なんです。
特定行為研修を修了した=特定行為をする人ではありません。
今まで「もっとここをこうしたい!」って思っていたけど、出来なかったことが出来るようになって「痒い所に手が届く」ようになりました。便利でしょ。