看護師のキャリアについて悩んでいて「特定認定看護師or特定看護師」や「看護師の特定行為研修」に興味を持ったけど、「どの特定行為が良いのか分からない」 「パッケージ研修は、どれがお勧めなの?」と悩んでいる方もいらっしゃると思います。
私も受講するときに、情報が少なくて困った経験があります。どの特定行為区分を受講すれば良いのか、全く分かりませんでした。
この記事では既に特定行為を実践している修了者から、「使用頻度の多い」もしくは「受講しておけば良かった」と思っている特定行為についてインタビューを行い、紹介しています。
- オススメの特定行為が分かる
- 選ぶときのポイントが分かる


オススメの特定行為
- 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チュー ブの位置の調整
- 侵襲的陽圧換気の設定の変更
- 非侵襲的陽圧換気の設定の変更
- 人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整

最も、声が多かったです。動脈血液ガス分析関連とセットで受講するのがお勧めです。
認定看護師教育課程(特定行為を組み込んでいる教育課程(B課程)では、『クリティカルケア』に含まれています。
- 動脈血液ガス分析の直接動脈穿刺法による採血
- 橈骨動脈ラインの確保



集中治療室や救命センターだけでなく、一般病棟でも幅広く使えます。取っておくと何かと便利です。
認定看護師教育課程(特定行為を組み込んでいる教育課程(B課程)では、『手術看護』に含まれています。
- 褥瘡(じょくそう)又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
- 創傷に対する陰圧閉鎖療法



病院だけでなく、訪問看護でも活用することができます。後々、病院以外で働くことを考えている方にもお勧めです。
在宅・慢性期領域パッケージにも含まれています。認定看護師教育課程(特定行為を組み込んでいる教育課程(B課程)『在宅ケア』には「在宅・慢性期領域パッケージ」が丸ごと含まれています。
オススメの特定行為~番外編~
- 中心静脈カテーテルの抜去



鼠経にCVが入っていて、早期離床を促したい時や患者さんの苦痛を取り除きたい時にあると良いです。
CVを挿入中の発熱した患者さんのCV入れ替えの時も、CV抜去➡血液培養採血(動脈穿刺)の合わせ技も出来ます。
認定看護師教育課程(特定行為を組み込んでいる教育課程(B課程)には含まれていません。
- 末梢留置型中心静脈カテーテルの挿入



PICCカテーテルは、病棟でも目にする機会があるかと思いますが、抗がん剤を投与する病棟では特に多く触れる機会があると思います。
皮膚損傷に係る薬剤投与関連(抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射及び投与量の調整)も一緒に受講すると活用の場面は増えそうです。
認定看護師教育課程(B課程)には含まれていません。
- インスリン投与量の調整



一般病棟だけでなく、集中治療室でも使うこともあります。
訪問看護や老人保健施設でのオススメの特定行為
特定認定看護師や特定行為の修了者は、病院で勤務されている方が多いです。ただ、医師がいない場面でこそ活きる特定行為は訪問看護や老人保健施設での活躍も期待されています。
『在宅・慢性期領域パッケージ』を修了すれば問題ありませんが、それに加えてオプションで受講するオススメも紹介します。
- インスリン投与量の調整
- 抗けいれん剤の臨時の投与
- 抗精神病薬の臨時の投与
- 抗不安薬の臨時の投与
- 感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与



『在宅・慢性期領域パッケージ』+この3つを修了しておけば、病院の慢性期や訪問看護、老人保健施設までばっちりカバー出来ます。
特定行為は一度修了しても再度区分別科目から受講が可能です。後から取っておけば良かったと思った特定行為も受講できます。しかし、再度受講するのは面倒なので最初から限定せずに幅広く修了しておくことをお勧めします。
『パッケージ研修』の詳細
特定行為区分の研修は、受講者にとっても施設側にとっても負担が大きいものになっています。そのため、現場で頻度の多い、ニーズのある特定行為研修に限定しコンパクトにパッケージ化することで研修期間を短縮させることを目的としたものです。



研修期間を短縮できるパッケージ研修の方が受講するメリットがあるんじゃないの?



ここで注意したいのは「免除」される特定行為です。
「免除」された特定行為については研修を行わないため研修期間の短縮になりますが、研修修了後に免除された特定行為は行うことが出来ません。
研修修了後に10年 20年と同じ部署で勤務しているでしょうか?限定せずに幅広く取っておいた方が活躍の機会が広がります。
免除された特定行為は研修修了後に実施可能か否かは、日本看護協会に確認を取り「免除された特定行為の実施は、出来ない」と返答を頂いております。
パッケージ毎に同じ特定行為区分であっても、免除される特定行為は異なります。
「集中治療領域パッケージ」を修了した場合、「直接動脈穿刺法による採血」が免除されています。研修修了後に10年 20年と集中治療室で勤務しているでしょうか?
一般病棟に異動した場合、一般病棟ではAラインが挿入されている患者さんはほとんどいません。「直接動脈穿刺法による採血」が必要になったとしても行うことが出来ません。



それじゃあ、パッケージ研修を受講するメリットがないじゃない。



研修施設に免除されている特定行為が取得可能か確認をした方が良いです。
オプションで追加で「特定行為区分」を受講できるケースもあり、柔軟に対応してくれるようです。
在宅・慢性期領域パッケージ
特定行為区分 | 特定行為 |
---|---|
呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連 | 気管カニューレの交換 |
ろう孔管理関連 | 胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換 膀胱ろうカテーテルの交換 |
創傷管理関連 | 褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去 創傷に対する陰圧閉鎖療法 |
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整 脱水症状に対する輸液による補正 |
※ 黄色マーカーは免除される特定行為
外科術後病棟管理領域パッケージ
特定行為区分 | 特定行為 |
---|---|
呼吸器(気道確保に係るもの)関連 | 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整 |
呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 | 侵襲的陽圧換気の設定の変更 非侵襲的陽圧換気の設定の変更 人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整 人工呼吸器からの離脱 |
呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連 | 気管カニューレの交換 |
胸腔ドレーン管理関連 | 低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及びその変更 胸腔ドレーンの抜去 |
腹腔ドレーン管理関連 | 腹腔ドレーンの抜去(腹腔内に留置された穿刺針の抜針を含む) |
栄養に係るカテーテル管理(中心静脈カテーテル 管理)関連 | 中心静脈カテーテルの抜去 |
栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連 | 末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入 |
創部ドレーン管理関連 | 創部ドレーンの抜去 |
動脈血液ガス分析関連 | 直接動脈穿刺法による採血 橈骨動脈ラインの確保 |
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整 脱水症状に対する輸液による補正 |
術後疼痛管理関連 | 硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整 |
循環動態に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整 持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整 持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整 持続点滴中の降圧剤の投与量の調整 持続点滴中の利尿剤の投与量の調整 |
※ 黄色マーカーは免除される特定行為
術中麻酔管理領域パッケージ
特定行為区分 | 特定行為 |
---|---|
呼吸器(気道確保に係るもの)関連 | 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整 |
呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 | 侵襲的陽圧換気の設定の変更 非侵襲的陽圧換気の設定の変更 人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整 人工呼吸器からの離脱 |
動脈血液ガス分析関連 | 直接動脈穿刺法による採血 橈骨動脈ラインの確保 |
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整 脱水症状に対する輸液による補正 |
術後疼痛管理関連 | 硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整 |
循環動態に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整 持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整 持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整 持続点滴中の降圧剤の投与量の調整 持続点滴中の利尿剤の投与量の調整 |
※ 黄色マーカーは免除される特定行為
救急領域パッケージ
特定行為区分 | 特定行為 |
---|---|
呼吸器(気道確保に係るもの)関連 | 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整 |
呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 | 侵襲的陽圧換気の設定の変更 非侵襲的陽圧換気の設定の変更 人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整 人工呼吸器からの離脱 |
動脈血液ガス分析関連 | 直接動脈穿刺法による採血 橈骨動脈ラインの確保 |
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整 脱水症状に対する輸液による補正 |
精神及び神経症状に係る薬剤投与関連 | 抗けいれん剤の臨時の投与 抗精神病薬の臨時の投与 抗不安薬の臨時の投与 |
※ 黄色マーカーは免除される特定行為
外科系基本領域パッケージ
特定行為区分 | 特定行為 |
---|---|
栄養に係るカテーテ ル管理(中心静脈カ テーテル管理)関連 | 中心静脈カテーテルの抜去 |
創傷管理関連 | 褥瘡又は慢性創傷の治療における血 流のない壊死組織の除去 創傷に対する陰圧閉鎖療法 |
創部ドレーン管理関連 | 創部ドレーンの抜去 |
動脈血液ガス分析関連 | 直接動脈穿刺法による採血 橈骨動脈ラインの確保 |
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整 脱水症状に対する輸液による補正 |
感染に係る薬剤投与 関連 | 感染徴候がある者に対する薬剤の臨 時の投与 |
術後疼痛管理関連 | 硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投 与及び投与量の調整 |
※ 黄色マーカーは免除される特定行為
集中治療領域パッケージ
特定行為区分 | 特定行為 |
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呼吸器(気道確保に係るもの)関連 | 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整 |
呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 | 侵襲的陽圧換気の設定の変更 非侵襲的陽圧換気の設定の変更 人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整 人工呼吸器からの離脱 |
循環器関連 | 一時的ペースメーカの操作及び管理 一時的ペースメーカリードの抜去 経皮的心肺補助装置の操作及び管理 大動脈内バルーンパンピングからの 離脱を行うときの補助の頻度の調整 |
栄養に係るカテーテ ル管理(中心静脈カ テーテル管理)関連 | 中心静脈カテーテルの抜去 |
動脈血液ガス分析関連 | 直接動脈穿刺法による採血 橈骨動脈ラインの確保 |
循環動態に係る薬剤 投与関連 | 持続点滴中のカテコラミンの投与量 の調整 持続点滴中のナトリウム、カリウム 又はクロールの投与量の調整 持続点滴中の降圧剤の投与量の調整 持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸 液の投与量の調整 持続点滴中の利尿剤の投与量の調整 |
※ 黄色マーカーは免除される特定行為
特定行為を選ぶときのポイント
- 認定看護師教育課程(B課程)は、受講する特定行為区分が決まっている。
- パッケージ研修の「免除される特定行為」を理解しておく(追加で受講することも可能)
- 新しい特定行為を習得したい場合、区分別科目から再研修を行い、追加で特定行為を修了出来る。
- 10年20年後の働き方を考慮し、幅広く特定行為区分を受講することが出来る「特定看護師」お勧め。
まとめ
現在の認定看護師教育課程(A課程)は、2026年に廃止となり、2020年から認定看護師教育課程(特定行為を組み込んでいる教育課程(B課程)に移行されています。今後、特定行為を実施出来る看護師の数の増加や2024年施行予定の「医師の働き方改革」に伴い、特定行為の需要も拡大していくことが予想されます。
自分が特定認定看護師や特定看護師になった後に、どのように特定行為を活用できるかイメージしてみましょう。また、現在自分が所属している病棟で特定行為で介入することにより解決できそうな困ったことはありませんか?職場のスタッフや医師に相談してみると意外な需要があったりするかもしれません。
研修修了後も10年20年と同じ病院や部署に勤務しているでしょうか?部署(病棟)が変われば必要とされる特定行為も変わってきます。
また、夜勤が辛くて続けられなくなることも予想出来ます。その際に、特定行為を活かして訪問看護や老人保健施設、透析クリニック(透析管理関連)での勤務が可能かもしれません。幅広く特定行為を修了しておいた方が選択肢が広がります。