現在、看護師の最高峰のキャリアには診療看護師(NP/ナースプラティクショナー)という認識の方が多いと思います。
診療看護師は、大学院で2年間の修士課程を修了し診療看護師という資格を得ます。修士課程には21区分の特定行為が含まれています。(21区分を修了しない修士課程も存在します。)
ここで、疑問が生まれるのは「21区分を修了した特定看護師」と「診療看護師」の違いは何なのか?という所だと思います。
この記事では診療看護師と特定看護師の違いについて紹介します。
コチラもどうぞ

修士課程の違い
名称 | 診療看護師 | 特定看護師(特定行為研修) |
---|---|---|
条件 | 5年以上の実務経験 | 3~5年以上の実務経験 |
特徴 | 診療科に所属 診療の補助+特定行為を行う | 手順書に従って高度な知識と 特定行為を行う |
教育 | NPコース設置の大学院(2年) | 指定研修期間で研修を修了する (1年~2年間) |
認定機関 | 日本NP教育大学院協議会 | 厚生労働省 |
資格 | 日本NP教育委員会による認定資格 | 修了証(資格ではない) |
所属 | 診療部 | 診療部or看護部 |
更新制度 | あり | なし(今後追加される可能性あり) |
卒後の所属

診療看護師は、卒後診療部へと配置となり研修医と同様の2年間のローテーションとしている所が多いようです。
特定看護師の場合、上のグラフを見ると、診療部所属となっているのは少数ということが分かります。
特定看護師の働き方
診療看護師は、診療部所属となるため医師と同様の勤務形態となります。では、看護部所属の特定看護師はどうでしょうか?
特定看護師の働き方は、修了している特定行為によって変わりますが、大まかに3つに分類されます。
「創傷管理関連」などの特定行為をピンポイントで行う、「やること」がはっきりと決まっている特定行為が多い
「皮膚・排泄ケア特定認定看護師/WOCナース」など
日勤は、全て活動日として設けており、夜勤は看護師業務を行う
1週間の中で、1日や2日活動日を設けている。活動日以外の日勤は看護師業務を行う
※活動日は軽症の患者or患者の受け持ちをしない
勤務中に特定行為を行う(短時間で行うことが出来る処置的な特定行為が多い)
働き方の違い
組織横断的活動
「やること・出来ること」が具体的に決まっている特定行為が、この働き方が多いです。
逆に多くの特定行為区分を修了している場合、出来ることが多すぎて、この働き方は向いていない場合があります。
活動日を設けている
活動日を設けている場合と設けていない場合の違いは、修了者の考え方の違いが反映されています。
活動日を設けている場合は、医師と同じように治療や処置をしてみたい。もっと知識や技術を習得したいという人が多いです。診療看護師に近い考え方や働き方になります。
活動日を設けていない
活動日を設けていない場合は、「看護師業務をメインとして行いつつ、特定行為は+α」として行いたいという考え方が多いです。
主に、「動脈穿刺」や「Aラインの確保」、「ドレーン抜去」などの短時間で終わる処置が多いです。

医師に朝一で頼んだのにドレーン抜いてくれない。Aさんを離床させたいのに。



先生たち、今日手術日だから夕方にならないと病棟には来ないです。
私が、代わりにドレーン抜去します。
このようなケースで使ったりします。「看護を便利にスムーズにしたい」という考え方です。
特定看護師の活動日の有無




研究結果では、活動日を設けているのは3割程度、活動日の日数は平均9日間です。
活動日の内容
- 医師のカンファレンス参加
- エコーを使った心臓や肺の評価
- CT画像やレントゲン写真の評価
- 検査結果から今後の治療方針の相談
- 点滴の変更
- RSTやNST RRSに参加(診療報酬が取れる)
活動日を設けている場合、特定行為だけをやっているように思われるかもしれませんが、そうではありません。
特定行為は、患者に大きく影響を与えるため、行うための知識が必要です。特定行為をしない時間は医師に質問をしたり、エコーの使い方やCT画像の見方などの知識の習得に当てています。
- 診療看護師でないと医師の様に医療に介入出来ないと思われているが、特定看護師も同じことは出来る
診療看護師と特定看護師の給料
診療看護師の給料
診療看護師の給与は、インターネットの情報も少ないですが、月5~6万円の手当としている施設が多いようです。「国立病院機構では月に6万円の手当」「北海道紋別市にある広域紋別病院では年収600万から800万円」と記載がありました。診療看護師としての手当もない施設もあるようです。



私の友人の診療看護師は、「診療看護師になる前と給料が変わらない」と言っていました。診療看護師の評価が給与へフィードバックされるのは先になるようです。
特定看護師の給料


特定看護師としての手当をもらっているのは30%です。とても、少ないです。貰っている額として多いのは10~20万円なので、毎月に換算すると月に1万円程度でしょうか。
特定看護師として手当を貰っているというより、「資格手当」として、貰っているのかもしれません。
診療看護師と特定看護師のキャリア
診療看護師になると看護師としての今までのキャリアは活かしにくいです。診療看護師としての仕事をしながら、看護師の師長などの役職の仕事を、平行して行うのは難しいのではないでしょうか。
また、所属が看護部ではなく診療部となるため診療看護師としての昇進 例えば、医局長や部長になるのは医師でない限り不可能です。
診療看護師の方は、診療看護師になった後、「これじゃない(-_-;)」と思ったら看護師へ戻れるんでしょうか。
そこら辺、どうなんでしょう。
特定看護師の場合、所属は看護部のままなのでキャリアは継続となります。
まとめ
看護師のキャリアで「診療看護師」になりたいという方は、多いと思います。私も、診療看護師カッコイイと思います。
しかし、自分が「診療看護師を目指すか? 治療に専念したいか?」と言われるとそうでもないです。
「特定看護師」という制度が周知が出来ていないため埋もれてしまっていることが残念です。
特定行為研修を修了して「活動日を設けた医療へのプロフェッショナル」へ進んでもカッコイイと思います。
「特定行為を使って、看護を便利にスムーズにしたい。特定行為は看護師業務の+α」くらいの気軽さで特定行為を使っても素敵だと思います。