私の所属している施設には以下の特定行為修了者がいます。術中麻酔管理領域や糖尿病の血糖コントロール関連のチームと違い、私の修了した特定行為6区分のチームは働き方について紆余曲折がありました。
その経緯を紹介します。私の修了した特定行為区分は需要の多い特定行為区分なので、今後も修了する方が多いと思います。研修修了後の働き方について悩まれている方も多く、参考になるかと思います。
- 術中麻酔管理領域
- 集中治療関連の特定行為6区分(パッケージ研修ではない)
- 糖尿病・代謝疾患等の血糖コントロールに係る薬剤投与関連(パッケージ研修ではない)
- 創傷管理関連(パッケージ研修ではない)
- 呼吸器(気道確保に係るもの)関連
- 呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連
- 栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連
- 動脈血液ガス分析関連
- 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連
- 循環動態に係る薬剤投与関連

現在の働き方

私は、研修修了時点で救急外来に所属していました。その後、2年ほど経過し現在は、HCUに所属しています。
部署が変われば、必要とされる特定行為も変わってきます。特定行為修了者でも同じ部署に10年20年は勤務出来ないと思います。
同じ区分を修了した他の修了者は、自分の部署で特定行為を行っています。看護師業務を兼任しながら特定行為を行っているスタッフもいれば、活動日を設けて特定行為を行っているスタッフもいます。
修了後の働き方の違いについて



どうして、同じ特定行為区分を修了したのに働き方に違いがあるの?
それに、皆同じ部署 例えば、集中治療室で勤務するのではないの?



その疑問は最もだと思います。
経緯について説明します。
研修修了後の流れ
同じ特定行為区分の修了者チームによる働き方についての話し合いで、試験運用という形で以下の方針を決めました。
- 試験運用の期間は3か月
- 特定行為の対象は院内全体の患者
- 曜日ごとに担当者を決める(月曜日~金曜日)
- 担当の曜日は担当者がピッチ(直通電話)を持つ
- 担当者は、医師や看護師から連絡があった時にすぐに行動出来るように、患者の受け持ちをしないで所属部署のフリー業務をする



試験運用を行う前は、主に人工呼吸器の設定変更や動脈穿刺かAラインの確保の需要が多いと予想していました。
3か月間の試験運用の結果は?



特定行為の活動は当初の予想とは違い、1週間に1度か2度程度とほとんど活動出来ませんでした。
また、運用していく中での問題点についても話し合いをした結果、とりあえず院内を横断的に活動するのは中止にしようということになりました。
3か月運用して見えた問題点
- 依頼の連絡がこない
- 研修修了者のスキルにばらつきがある
- 治療経過を知らない患者への呼吸器の設定変更は怖いと感じる
- 特定行為のスタッフに連絡するメリットが曖昧
仕事の依頼が来ない
試験運用開始前に、事前に師長たちが集まる会議と診療科の部長が集まる会議でプレゼンを行いました。
しかし、3か月トライした結果は、1週間に1度か2度仕事の依頼がある程度でした。それも、特定行為に関わらない内容の連絡も半分程度ありました。
新しい取り組みなので、関係各所に周知してもらうことが難しいことは分かっていましたが、3か月ほとんど成果はありませんでした。病棟の看護師からは、どういう時に特定行為のスタッフに連絡をすれば良いのかわかないという意見もありました。
医師からの意見は、「自分でやった方が早い」 「そもそも知らなかった」という意見を頂いています。



普段、関わらない診療科の医師や他部署のスタッフは、信頼関係という点からも「任せて大丈夫なの?」という不安が言葉には出なかったけど感じました。
周知方法も課題ですが、信頼関係の構築も大切です。
修了者のスキルにばらつきがある
特定行為の修了者は、集中治療室や一般病棟、手術室に所属しているスタッフもいます。特定行為の研修で初めて人工呼吸器に関わったというスタッフもいます。
そのため、集中治療や人工呼吸器に対する理解について修了者間でばらつきがあるという意見がありました。仕事の依頼が来た時に、全員が同じように対応できる必要があります。
治療経過を知らない患者への呼吸器の設定変更は怖いと感じる
呼吸器関連の「人工呼吸器の設定変更」は、特定行為の中でも需要が多い部類になります。特定行為の中でも患者に与える影響が大きい部類に入ります。治療歴を正しく理解しないと、患者へ悪影響を与えかねません。
また、他部署の患者はカルテを読んでも治療歴を理解することは難しく、呼吸器の設定を変更することは「危険で怖い」という意見がありました。



カルテに記載されずに、医師間の口頭で「この患者さんってこういう所があるよね。」という内容があったりします。
カルテに記載するほどでもないけど、「以前にこういうエピソードがあった」など、カルテから情報を得ることの難しさを実感しました。
特定行為のスタッフが介入するメリットが曖昧
仕事の依頼が来ないという課題にも繋がると思いますが、特定行為のスタッフが介入するメリットが曖昧です。病棟のスタッフからは、何故主治医ではなく、特定行為のスタッフに連絡を取らなければならないの?という意見を病棟のスタッフから聞きました。
確かに、主治医の方が詳しく治療歴を理解しており、対応も早いです。1週間に1度か2度きた連絡も主治医が手術中や外勤のため繋がらず、特定行為のスタッフに連絡をしたという経緯でした。
問題点に対する活動方針の変更
- 院内全体を対象にしても、特定行為だけでは需要がなく活躍の場が少ない
- 周知方法や連絡方法の確立を行っていく
- 他部署の患者は、信頼関係や治療歴の把握が難しく特定行為の介入は困難
自部署で活動する
3か月の試験運用を経てチーム内で話し合った結果、「特定行為だけでの活動は需要が少ない」ということが分かり、一旦自部署で活動をするという結論になりました。活動日の有無については、この時点では決めていませんでした。
- 医師や看護師と信頼関係が築けている
- 自部署の患者であれば、治療歴を把握している
まとめ
「特定行為」ではなく、自分たちがやりたいことは何なのかということを大切にした
他の領域のチームは、スムーズに特定行為を活用し始めたのに対し、「救急・術中麻酔管理・集中治療領域チーム」は、紆余曲折していました。「特定行為を行う」ということが目標になってしまい、自分たちがやりたいことを見失っていました。
そこで、院内全体で特定行為を活用することに焦点を当てずに、自分たちがやりたいことは何なのか?という話し合いで「自分の部署で特定行為を行いたい」という結論が出ました。